コラム10「デザイナーの常識、良識、見識」
安藤 孚
(コラム9に続く) 16都道県で展開される東日本ブロックの「活動運営のあり方」について、「コラム9とコラム10」で記述してみたい。
{コラム9}では、
協会論(9) 1 浅香嵩さんからのメール
2 東日本ブロック運営の提案 2-1 協会とブロック
2-2 活動計画
協会論 (10)
2-3 活動地域
ブロックの活動範囲は16都道県が対象で、この広域では「サブ・ブロック制」の検討も必要ではないか。地域の現状は、都市を中心とした分析も効果的といえる。各サブ・ブロックの専門教育機関、企業、行政など多岐にわたる。しかし総花的ではなく、キーステーションの設定、キーマンを選択して効率的な組織運営など重点的、戦略的、持続的な展開政策が重要な切り口である。
地域ニーズの探り出しと共に、そのニーズにどう対応するか、地域の抱える課題に対する多軸的、多面的、多層的な対応力が検討課題ともいえる。
デザイン系教育機関の洗い出しについては、教育研究会の調査資料などを参考に検討が可能である。
事例 北海道サブ・ブロック 札幌市 札幌市大
東北サブ・ブロック 仙台市 東北工大
北関東サブ・ブロック つくば市 筑波大
首都圏サブ・ブロック 東京都 東京芸大
東海サブ・ブロック 浜松市 静岡文芸大
各サブ・ブロックの専門教育機関、企業、行政機関など多岐にわたる。しかし総花的ではなく、キーステーションの設定やキーマンを選択して効率的な組織運営など重点的、戦略的、持続的な展開政策が重要な切り口である。
地域ニーズの探り出しと共に、そのニーズへどう対応するか、地域の抱える課題に対する多軸的、多面的、多層的な対応力が検討課題ともいえる。
デザイン系教育機関の洗い出しについては、教育研究会の調査資料などを参考に検討が可能である。
企業や行政などのネットワーク開発にどう取り組むか、今後の協会の存在と会員増強に強く関連する問題として協会やブロックの広報活動のあり方が問われる。 この地域戦略政策は最優先事項の1つと考えたい。
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地域開拓は、協会としては、都市を中心とした地方自治体への発信力が最重要課題であり、事業所としては、特色ある中小企業への重点的戦略が「鍵」。
2-4 会員増強
職能を取り巻く社会環境、協会の存在と役割を視点に会員増強の問題を考えてみたい。
職能としてのプロの現場は、本来「原則、自由競争、市場原理主義社会」。しかし、デザインビジネス(事業)が健全産業として社会に定着するためには「職能基盤」の整備がその前提条件である。
この職能の社会的浸透と定着化が協会の役割であり普及啓蒙を通して健全事業展開への前方支援(公助)と、プロの成果に対する職能責任でのプロのキャリアアップへの後方支援(共助)の両面からの支援が協会の役割と考えている。しかし、会員の自立性(自助)ではあくまでも「自己管理、自己実現、自己責任」が職能としての当然の義務である。
協会は、会員にとって単なる弱者救済や駆け込み寺ではなく、ハローワークでもない。「健全産業としての職能の確立」と「健全事業展開」のための支援機関であり、それを支えるのは会員の高い使命感と強い主体性を基本とする組織活力である。
協会活動によって得た高度な研究成果や情報を資産に協会の公益活動、共益活動が展開され、参加したキャリアを武器に会員の職能の自立性(自助)を高めること。そしてこの「職能基盤整備確立への賛同」を前提条件としての協会入会を強く勧めたい。
2-5 組織活力
人材の質的向上と量的拡大は、協会の最重要事項の1つと考え、研究会活動への会員参画勧誘は最も緊急の課題である。休眠会員の削減化も含めて、積極的に定期的な勧誘システムを実施したい。
研究会参加が会員にとって多大なメリットとなる仕組みづくりも検討しよう。
ブロック幹部候補の人材育成も視野に入れて、会員の計画的な協会歴(キャリアアップ)をもった協会幹部の育成を図りたい。
事例 委員 一兵卒として汗をかき、積極的活動への期待評価
副委員長 意欲と能力を発揮、実績と人望への実績評価
委員長 現場の指揮、リーダーシップとその業績への実績評価
運営委員 運営会での政策論議で実効提案の成果への期待評価
副ブロック長 ブロック運営の調整、行動力への実績評価
ブロック長 ブロック活性化でのリーダーシップの発揮への実績評価
役員 協会運営での政策論議、良識、見識ある行動力
グローバルな視野で、未来に対する確かな業界像や協会像、を描き発信し、ブロックからセンターへの着実な歩みで、存在感ある人材の誕生が最も望ましい。研究会にも参加せず、突然、役員選挙に立候補するような政略的、策略的野心をもつ会員は必要ない。
協会発展のために、ブロック活動に真摯に取り組み「職能の確立と向上」のために、労を惜しまずに尽くす会員を増やし育成したい。
2-6 研究会活動
基盤整備の未熟な団体では、会員の「手弁当、主体性、使命感」を期待したい。情報の共有化、個人の力の結集が集団のパワーアップにつながる。死蔵物も知恵と工夫で価値あるものに変換できる。
そんな事例を幾つも見ている。
ブロック活動の成果はブロック全会員の共有財産であり、更にそのブロック活動から得た知識やスキルを武器にして、各人の新たなビジネスに活かせるのではないか。ブロックの研究会活動参加は会員のビジネスチャンスへの有力な手段とも考えられる。これまでの受動的姿勢の延長線上では、プロの職能は通用しない。意欲と能力で切り開くためにも、研究会活動への参加は欠かせない必須条件ではないか。
研究会活動で心得ておくことは、組織活動の基本的な義務である。
事例 提出義務
- 設立趣意書 設立時に認可、記録の為に運営会への提出書類
- 事業計画書 毎事業年度開始前に事業、予算の承認のための提出書類
- 活動報告書 毎事業年度終了後に事業、決算の承認のための提出書類
会計処理
- 活動費用の会計処理(金銭、証票、伝票など)は規定により適切に処理
- 外部機関への収支会計は全額実費支払い
- 会員の協会活動による会計処理(行動費)は実費支払い、他規定による
定例会議
- 運営会 ブロック運営の報告、審議、議決、他
- 運営・連絡会 活動状況の報告、連絡、調整、責任者の出席義務
その他
- 活動成果は全て記録化し、一元管理としてブロックの共有資産とする
- ブロック資産(機器)は一元管理とし、各研究会での共有活用とする
- 活動成果の私物化や独占化など活動の阻害要因は徹底排除すべき
2-7受託事業
協会は、公益法人(特例民法法人)である。健全な競争原理をもつ職能の民業を支援する団体であり、民業圧迫にならないよう「公」意識を重視したい。研究会活動は、会員やブロックの自主的テーマとして取り組む研究活動であり、外部機関からの受託事業は、公益法人の立場で応える普及啓蒙事業活動である。全て、協会(事務局)を窓口として理事会承認の上、ブロックが担当する事業活動である。
慎重に且つ、ブロックとして適切に対応したい。
受託事業の留意点について
- 会員の機会平等のためにも、情報開示で透明、公正に勧めたい。
- ブロックの事業収入増の意味からも積極的な会員の参加を期待したい。
- 成果については、職能、協会の結果責任が問われるので、善管注意義務は勿論、最適解の成果(企画適合性)で委託側の要望に応えなければならない。
- 会員の活動費などは原則実費支払い、その他は協会規定により処理する。
- 着手時からのドキュメントも含め、事業計画書や終了時の活動報告書など、ブロックのデータ
- ベースとして、記録保存管理は当然の義務である。その他、契約書を含め文書管理など、諸規定を整備したい。
受託事業の手順
- 着手段階 外部機関から協会事務局へ(事務局での管理力)
理事会での審議・議決 - 展開段階 ブロック運営会 会員広報 (実践力)
組織編成
計画書 (作業項目・工程・日程・組織・費用)
契約書
実施・検収・終了 - 着地段階 報告書 (管理力)
ブロック運営会・理事会報告
ブロックには、過去17年間の活動資産を多様に活かした事業収入の可能性がある。その鍵は、活動の一元管理によるデータベース化とその管理にある。地域の現状把握と事業開拓には多くの可能性が想定される。これらの地域での戦略的な取り組み、持続的公益事業の活性化に対して、会員を協会活動にどう呼びかけるか。地域に対しても、会員に対しても広報活動と情報交換の粘り強いキャッチボールが重要な要素かもしれない。事業収入増のためにも受託事業は加速したい。この「鍵」は、市民、団体、行政への戦略的広報活動が最重要課題ではないか。
デザインを取り巻く環境はいま、自助・共助・公助の構造変化を迎えている。本来、プロの世界は自由競争時代、市場原理主義社会。健全競争は活性化の源。健全産業のためには、デザインの職能基盤整備と共に社会的有用性の定着が最優先事項。
基本認識は、プロのパワーアップと職能支援のバックアップが協会の基盤。会員は主体性とルーチンワークの活動参加で協会発展に尽力を惜しまない。何よりもプロの意識構造の改革がいま職能の最重要事項である。
多様化社会。社会ニーズに応える公益活動への選択と集中。実績の社会的評価、情報化社会。活動成果の有効活用化。社会への発信力で示す協会の存在意識。
成熟化社会。組織活動では、会員の主体性と基本的規範の厳守は不可欠条件。
会員の成熟した自立性と職能団体としての協会基盤整備がいま、最重要事項。
以上 」
この「ブロック活動の運営について」は、当時の東日本ブロックの正副ブロック長に「私見」として提案
したものです。「コラム9」の故、浅香さんの運営会へのメールと共に、参考になれば幸いです。
情報収集(10)
世界が直面し始めた人口減
世界の人口は18世紀後半の10億人から産業革命を経て、直近は78億人まで膨れ上がり、世界経済の急拡大をもたらしました。しかし、ここへきて増加のスピードは著しく鈍化。合計特殊出生率は1964年の5,05から、2019年は2,40まで下降。現在の人口を維持するのに必要な出生率の2,10に近づいてきています。国連では、世界の人口は2100年には109億人まで増加するとしています。また米ワシントン大学の研究チームでは2064年の97億人をピークに減少に転じ、2100年には87億人となる見込み。
——(中略)——
歴史を振り返ると、世界的なパンデミックが背景にあったことを忘れてはいけない。
14世紀のペスト、20世紀初めのスペイン風邪、そして今回のコロナ禍。
———(中略)———
主要国で人口問題に最も苦しんでいるのは日本です。2008年の1億2808万人ほピークに人口減少に転じ、2020年の合計特殊出生率は1,34まで低下。逆に高齢化率は28,9%と高く、潜在成長率は1980年前後の約4%から、直近は0,6%まで低落しています。
次に少子高齢化に直面するのは中国。2022年から人口が減り始めます。
——(中略)——
人口が減少しても、経済的な繁栄は続けられるのか。その答えは日本にあります。デジタル技術や在宅勤務による労働生産性の向上、高齢者の労働力化、利便性の高い保育所増設など、様々なアプローチで少子高齢化対策に取り組むことで、世界に範を示したいものです。
(ノースアイランド投資顧問 白石茂治)
(2021/11/5 朝日新聞 投資透視 より)