2015年度卒業制作展訪問
公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会
中部ブロック・次世代事業委員会
委員長 須藤正時
◆2015年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介◆
中部ブロック・次世代事業委員会では、2015年度もデザイン系大学卒業制作訪問(卒展訪問)を開催し、各学校毎に優秀な作品を2点選定し表彰しました。
2015年度のJIDA中部ブロックデザイン賞は以下の方々です。
2015年度JIDA中部ブロックデザイン賞
■名古屋芸術大学
2016年3月5日(土) 会場:愛知県美術館ギャラリー
卒展訪問の様子はこちらのFacebookページでご覧いただけます
最優秀賞:黒部武輝「ML-1“Midship reardrive Lightweight-1seater”」
評価コメント:
現代のクルマ離れの現象に対して「走りを楽しむ」提案を行った。既存のスポーツカーにとらわれず、フレームやエンジンが露出しており、アグレッシブでありながら製品化への可能性を感じさせる提案が共感を得た。オプション部品なども提案するとより現実味が増すであろう。スケールモデルの完成度も高く、徹底して追求している姿勢が高く評価された。(文責:木村光)
桐山優理「温~湯たんぽ再考~」
評価コメント:
抱いたり握ったり挟むことができる4種類の湯たんぽを陶器で提案した。生活の中で使ってみたくなるような、使う側にとって特別な湯たんぽであることを意識させるスタイリングである。釉薬もグラデーションを施し、隅々までこだわりを感じさせるデザインが評価された。(文責:木村光)
■名古屋工業大学
2016年2月28日(日) 会場:名古屋工業大学4号館1階ホワイエ
卒展訪問の様子はこちらのFacebookページでご覧いただけます
最優秀賞:齋藤拓磨「豊田市こども発達センター理学・作業療法部門利用環境向上計画」
評価コメント:
障害のある子どもたちを対象とした公共環境つくりの提案。現場であるセンターとの長期的な関係作りをベースに、ヒヤリングを行いながらアイデアの検証を重ねたプロセスは非常に精度が高い。また、現場において柔軟に展開できるピクトグラムはキャラクターとしても完成度が高く、既に現場で愛されていることは素晴らしい成果である(文責:後藤規文)
寺邊裕希「書字姿勢改善のための筆記具の提案」
評価コメント:
左利き用筆記具の提案。自分の経験をもとにしたシンプルなテーマから根源的な問題点を導き出し、数多くの試作を作りながら試行錯誤を繰り返した姿勢に好感が持てる。まだ粗削りな部分も多いが可能性を感じる提案である(文責:後藤規文)
ゲスト賞:佐藤貴大 「触覚を用いたユニバーサル・プレイシングの提案」
評価コメント:
丸い形状のボールの素材、柔らかさ、表面処理等の組合せでゲームの難易度を変えられる誰でも楽しめるユニークな作品である。子供の知育、お年寄りの触覚改善、リハビリテーション等 幅広い応用範囲が期待できる。(ゲスト賞審査員・有限会社神本樹脂工業所 神本 真)
※卒展訪問は前年度よりJIDA会員外の方に向けても開催のご案内をしており、この回にビーエム工業株式会社殿と有限会社神本樹脂工業所殿にご参加いただきました。そこで特別にゲスト賞を設けて、お二方より選出して頂きました
■大同大学
2016年2月28日(日) 会場:ナディアパーク・2Fイベントスペース
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最優秀賞:磯谷賢作「新しい視覚障害者向けの碁石と基盤の提案」
評価コメント:
自ら碁を打ち、TVで健常者と視覚障害者の対局を観たことが発想のきっかけであった。基盤をコンパクトな大きさとし表面に凹凸を設け、その中に鉄の芯を入れ、碁石は識別が容易な凹凸のある磁石とした。他の競技にも応用できる応用性のある提案である。(文責:木村光)
優秀賞:今泉彩子「ファッション読書」
評価コメント:
読書をしていることをアピールするためのブックカバーという視点は、読書好きであり、ブックカバーを以前から意識していたために生まれたものである。真空成型で加工された、色彩が美しいカバーからは完成までの苦労が読み取れる。作品の狙いが直感的にストレートに伝わる点が評価された。(文責:木村光)
■名古屋市立大学
2016年2月27日(土) 会場:市民ギャラリー栄
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最優秀賞:官林龍之介「脳血管障害患者の運動補助を目的とした上肢リハビリ機器のデザインモデルの制作」
評価コメント:
3Dプリンターで制作された上肢リハビリ機器は、機能的であり見た目にも美しく、医療とデザインが一つになった完成度の高い作品であった。また、現状調査の分析と試作実験の分析が十分に説明され、最終成果品に至ったデザインプロセスがよく理解できた。今後の医療分野への導入が期待できる。(文責:滝本成人)
優秀賞:保井康佑「競技用自転車専用下腿義足のデザインモデルの制作」
評価コメント:
自転車走行と歩行のシミュレーションと力学的検証が十分にできている。デザインの完成度も高い。また、保険適用の社会的なルール・現状分析が説明され、実用化を目指した研究であることが理解できた。4年後のパラリンピックで日本チームとして活躍してほしい。(文責:滝本成人)
■名古屋デザイナー学院
2016年2月27日(土) 会場:名古屋デザイナー学院
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奨励賞:花村敏弘「和や傘〜NAGOYAKAS〜」
評価コメント:
シェア傘の傘立ての提案。 地下鉄などの駅におかれるシェアする為の傘に関連するデザイン提案。おき忘れ傘を利用した現状のシェア傘の見栄えの悪さや運用上の問題をデザインを通して解決を試みた社会性の高いデザインテーマ。傘の柄を利用シールでシェア傘である事の表現、柄を掛ける事で並びの美しさを表現する工夫などとても良い提案である。しかしながら現状の置き忘れ傘を利用し今回の提案が出来ないものか、など更に考えを広げ解決できたらよい点もある。これからの展開に期待し奨励賞とした。 (文責:須藤正時)
奨励賞:杉浦さやか「inside&outside」
評価コメント:
忙しい女性の為のメイクセットの提案 女性の視点から沢山の化粧品を大型鏡付き化粧品ポーチとして提案。透明シートに表現された仕上がり見本を参考に化粧するがこれをさらに発展させると魅力的な化粧ポーチに繋がる作品。女性の気持ちに寄り添ったテーマである。 欲張りすぎ沢山の提案を盛り込みすぎているためにサンプルシートの種類など解決すべき課題もある。今後に期待し奨励賞とした。 (文責:須藤正時)
■愛知県立芸術大学
2016年2月27日(土) 会場:愛知県美術館ギャラリー
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最優秀賞:本荘栄司「FLY WAVE」
評価コメント:
新しい発想によるゴム動力飛行機の制作。試作を繰り返しそれぞれの結果から問題点を抽出し、改良を重ね最終成果品に至ったデザインプロセスを高く評価した。カーボンフレームは強度と美しさの兼ね備え完成度の高く、全体の動きは生物的なユニークさも備えていた。商品化されれば是非購入したい。(文責:滝本成人)
優秀賞:片田裕子「MON-AMI AMIE」
評価コメント:
表情が豊かな人形を「木・ガラス・金属・テラコッタ」などの素材で制作されている。被験者評価を行っているが、評価の集計はもう少し定量的な分析が必要と思われる。制作においては完成度が高く、展示台もオリジナルで制作され、独自の世界観を持っているところが評価された。(文責:滝本成人)
■名古屋造形大学
2016年2月20日(土) 会場:愛知県美術館ギャラリー
最優秀賞:野澤拓磨「U+knit」
評価コメント:
我々にとって極く当り前の“デザインオリエンティッド”な製品・商品の視点を「途上国や戦乱(?)の地」に変えた発想のユニークさに先ず驚ろかされました。従って、作者は例えばこの容器においても「安価で、使い易く、美しく…」と言う連想には向かわない。それらは所与条件(素材は本モデルと実モデルでは異なるのですが)に従って論理的に組み上げられた簡潔な用具になっていて見事だナと感じました。(文責:興膳生二郎)
優秀賞:片岡 茜「meek」
評価コメント:
片岡さんの“meek”は一言で言えば「多機能タンス」でしょうか?常識的には前後や左右にパッケージが多層化されるのでしょうが、比較的コンパクトなまとまりで済んでいます。工夫は左右鏡面の二重折りの効果であり、それが今日的「姿見」としての新らしさを演出しています。価格は気にしない学生らしい「装置」を感じさせる今日的な提案だと思います。惜しむらくは、このタンスの開閉状態を部屋の図面の中に図示してあれば実感的に理解できただろうと思います。(文責:興膳生二郎)
■愛知産業大学
2016年2月11日(木) 会場:愛知産業大学
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最優秀賞:横澤克吾「磁石を使った積み木型インテリアグッズの研究と制作」
評価コメント:
お洒落なインテリアグッズの提案。立体幾何学の基本形状を徹底的に分析し、人間の本能的な行為に従って工夫し、磁極を意識しなくてもパーツ間の付着する方法に成功した。材料の物性を極めて、厚さと重みを計算した上、サイズなどを決定。インテリアグッズに限らず、高齢者脳活性化グッズやメモのマグネット、知育玩具など、更なるデザインを展開する可能性が期待される。(文責:黄ロビン)
優秀賞:野末勝樹「佐藤オオキのデザイン手法研究と同手法による製品開発」
評価コメント:
有名なデザイナーの手法を分析した、デザインメソードの研究である。特にデザインシンキングの分析だけではなく、分析の結果に基づいて実際に再現・検証して、複数の高い完成度の事例を実践したことを評価したい。無意識のデザイン行為を科学的に解析し、この以前のデザイン思考を意識的に行うことを確立した。デザイン学研究として貴重な成果である。(文責:黄ロビン)
■名古屋学芸大学
2016年1月16日(土) 会場:愛知県美術館ギャラリー
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最優秀賞:小林佑莉「かなあそび」
評価コメント:
幼少期よりかな文字にふれながら筆順の大切さを知ってもらう知育玩具の提案。完成度が高く、綺麗にまとめられた提案で、筆順を意識させるアイデアは本人の「書」に対する想いが感じられ、好感が持てる。実際に幼児たちに遊んでもらう検証を重ねることで、更に発展しそうな可能性を感じる提案である。(文責:後藤規文)
優秀賞:田中沙季「ゆうぐばこ」
評価コメント:
公園用の遊具システムの提案。子どもたちはこんな遊びを望んでいるという本人の童心が素直に表現され、色や素材チョイスのセンスと、ネジ部分にも彩色するなどのきめ細かさがあり、好感がもてる作品。会場に来た幼児たちが楽しそうに遊び、なかなか離れたがらない姿が何よりもその魅力を物語っている。(文責:後藤規文)
※椙山女学園大学の卒業制作展訪問は、都合により本年度は開催しません
主催:(公社)日本インダストリアルデザイナー協会・中部ブロック
協力:セントラル画材株式会社