JIDA

第92回「リビングラボを活用した高齢者の生活における課題解決の手法」

 

◆テーマ【リビングラボを活用した高齢者の生活における課題解決の手法】
◆開催日:11月22日(金曜日)16:00~19:00
◆講師:

  • 特別養護老人ホームクロスハート幸・川崎 統括施設長 菊池健志さん
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員、Safe Kids Japan理事 北村光司さん
  • 東京工業大学 工学院 機械系 エンジニアリングデザインコース教授、Safe Kids Japan理事 西田佳史さん
  • JIDA キッズデザイン部会長 久永文


◆参加人者:44名(JIDAスタンダード委員関係者、講師含む)
◆会場: 六本木AXIS GALLERY
◆参加費:JIDA会員 2,000円(税込み)/一般 3,000円(税込み)/一般学生・学生会員 無料 
参加者に3つの小冊子「ABC理論で考える問題解決の方法」「かえたいこと」を発見するために」「リビングラボが目指すもの」を配布

◆概要
1)JIDAスタンダード委員会 キッズデザインの活動紹介(キッズデザイン部会長 久永文)
2011年から始めたキッズデザイン部会の活動の背景、活動の目的である「科学的データを活用することにより、子供の事故を予防する」活動について、「キッズデザイン実践ツールの開発」と「キッズデザイン製品の提案(ひとくち・かっと、あんしん・みみかき)」を紹介した。

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2)高齢者施設でのリビングラボ
(特別養護老人ホームクロスハート幸・川崎 統括施設長 菊池健志氏)
介護現場では、人材不足にともない、外国人材や高齢スタッフなど多様化する人材への対応が求められている。当施設で取り組んだ「川崎リビングラボ」では、利用者(高齢者)の自立度や自由度の向上とスタッフの生産性の向上という、これまで一見相反してきた課題をテクノロジーによって解決する試みを行った。19社が参加し、「移乗支援装置」「見守り支援センサー」「座位安定椅子」などを介護現場で使用した。この取り組みで、製品を検証するだけでなく、現場を観察したり、スタッフと検討することで、想定していなかった効果や新しいニーズやアイデアを発見した事例を紹介いただいた。

※リビングラボとは、開発者や研究者が、製品や社会政策などを、それらが実施に活用される現場で実際に利用する者と共に、共創的に開発を試みることで、より、有用で実践的な知財を形成しようとするもの。

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3)高齢者の理解にもとづくデザインのための「高齢者行動ライブラリ」の活用
(国立研究開発法人産業技術総合研究所 北村光司氏)
世界規模で認知症患者の急激に増加すると報告され、社会問題となっている。製品や環境が原因で起こる事故を誤使用や不注意と片付けるのではなく、高齢者の認知能力や身体能力を理解し、製品開発することにより、事故を予防することが必要である。
産総研では、高齢者の理解のために「高齢者行動ライブラリ」を作成している。これは高齢者施設や一般家庭にカメラを設置し、行動データ(映像データ及び姿勢データ)を収集し、身体・認知機能、行動種別、行動に関わった製品などの情報と関連づけ、ライブラリにしたサイトである。  この「高齢者行動ライブラリ」の活用方法や活用例を紹介いただいた。

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4)社会的課題を産業と結びつけ持続可能にする
(東京工業大学 工学院 機械系 エンジニアリングデザインコース教授 西田佳史氏)

国連で掲げた持続可能な開発目標(SDBs)などの社会問題を、リビングラボを活用して実際の現場の問題へ落とし込み、産業で解決可能な問題にしたい。
ABC理論は、変えたいモノ・コトを変えられない構造になっている状態を、変えられるモノ・コトを見つけて、
変えられる構造にする考え方である。
高齢者施設のリビングラボで、スタッフと企業がコラボし、変えられるモノ・コトを見つけたり、新たな変えたいモノ・コトを発見し、スタッフと企業が共進できた事例を紹介。
また、高齢者行動ライブラリから課題を見つけ、「心身機能」「活動」「社会参加」という3層で課題をとらえ、それぞれの層で変えられるモノ・コトを発見する試みを紹介いただいた。

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5)参加者からの質問
介護の経験があるデザイナーからは、「介護・高齢者の問題は製品だけでは解決せず、人や社会とのかかわりが大切と考えるが、講師の方々はどのように考えているか。」など考えを求められた。
今回の勉強会はテクノロジーや産業で高齢者の生活課題を解決する方法についての話であったが、参加者の質問から、高齢者の生活課題のとらえ方やそれに対する解決方法について多様な関心があることがうかがえた。

以上