スタンダード委員会セミナー部会
【第91回勉強会報告】
『アルミ加飾の徹底解説』
【開催日】2019年7月5日
【テーマ】『アルミ加飾の基礎から最新技術まで、徹底解説』
〜サンプルズ4A、4B発刊記念特別開催〜
【講 師】山口淳氏 東京アルマイト工業協同組合 理事 軽金属製品協会 アドバイザー
(株)アルミ表面技術研究所 取締役 (株)富士マーク 取締役
ものつくり大学 非常勤講師
【参加者】27名
【会 場】六本木JIDAギャラリー
【概 要】
1. アルミ加飾とアルマイト
電解液中で通電すると、液中にあるアルミニウムの表面に陽極酸化皮膜ができる。それをアルマイトと言う。アルミの加飾はこのアルマイト(陽極酸化被膜)を利用する。メッキ、塗装とは異なる。
*アルマイト加飾の3方法
1-1. 有機染色法:屋内装飾品、銘板
1-2. 無機染色法:紫外線に強い、屋外、建材
1-3. 電解着色法:紫外線に強い、屋外、建材
2. アルマイトの前処理
2-1. 目的別にアルミニウム素材を選択
2-2. 機械的前処理:光沢、梨地、ヘアライン、スピン、スクラッチ、型押エンボス、彫刻、バリ取り等
2-3. 化学的前処理:化学研摩処理、電解研磨処理、マスキングとエッチングで凹凸等
3. 表面にアルマイトを生成する(一次電解処理)
- 陽極酸化被膜ができることにより、元の寸法より大きくなる。
4. アルマイト加飾の主な工程
4-1. 有機染料による染色:アルマイトの微細孔に有機染料が入り込んだあと、穴をふさぐ(封孔)。
染料
- 水性の粉体/液体タイプ:染料槽
- 油性の粉体タイプ:塗布
- 浸透インキタイプ:シルクスクリーン印刷など、フルカラー
- 熱転写性フィルムタイプ:フルカラー
- スプレータイプ
4-2.無機染料による染色
- シュウ酸鉄アンモニウムを硫酸浴槽の中で直流電解し、アルマイトの微細孔を着色。封孔。
- 金色のみ、淡黄色→黄色→赤橙色、色調は温度・時間による。アルミのヤカン色
4-3.電解着色:色の着いた無機物をアルマイトの微細孔の中に沈着させて着色
- 二次電解着色
電解着色の水溶液を電気分解し、そこに浸されたアルマイト皮膜の孔底部に金属化合物が沈着し、着色される。
- 電解着色の水溶液には、Ni、Sn、Cu、Agなど使用、金属により色調は異なる。染料は不使用。
- 三次電解着色、四次電解着色
電解処理を重ねるごとに、アルミニウム素地と皮膜の境目に光学的性質の異なる薄膜の沈着が増していく。薄膜で起こる光の干渉により、着色皮膜が三次電解でブルー系やグレー色、さらに薄膜を厚くする四次電解では、ピンク、グリーンなどに発色する。
5. 諸処理を組合せた複合的な加飾や新技術の紹介
5-1. マスキングとエッチングで凹凸、ダブルエッチング
5-2. 機械的処理/化学的処理で凹と凸の表現を変える
5-3. マスキングで色分け
5-4. 多色染色でアート作品まで表現、転写フィルム/シルク印刷と複合処理
5-5. 屋外用有機染色
5-6. グラデーション染色
5-7. 一次電解発色法(スミトーン)でアルマイト皮膜自体を発色
5-8. 三次電解着色/四次電解着色、電解の回数を増やし多様に発色
5-9. 機能性アルマイト処理との融合(潤滑・抗菌など)
5-10. 硬質アルマイトの染色処理(A1050)⇒JIS H 8603 平成7年2月制定
6. 軽金属製品協会の案内
7. 質疑・応答
Q 紹介されたアルミ加飾は、どこに頼めるか?
A 軽金属製品協会または講師の山口淳氏へ問い合わせください。
Q 組み合わせるとかなり複雑な加工もできるようだが?
A 実際には制限があるので、相談してほしい。
Q 箔にもアルマイトはかかるのか、家庭用のアルミフォイルは?
A アルミ箔(厚さ0.006~0.2ミリ)を黒色などに染色している実績はある。家庭用アルミフォイルは約0.012ミリ厚で、コーティングのないものはアルマイト加飾が可能。電解でアルマイト加工するには、両端を厚く巻きつけてテンションをかけ、ムラがでないようにする。アルマイトの被膜をある程度厚くすることで、綺麗な黒に染まる。アルミ箔はスピーカーの高音の中心ドームなどにも利用されている。
Q 海外でも発注できるか?
A 海外ではできない技術がある。日本でも一部、かつてできたものが現在できなくなっている。
Q アルミ加飾サンプルは入手可能か?
A 染色サンプルは多いが、アルミ加飾の全貌は入手しづらい。
JIDAがサンプルズ4a、4bを発刊、総合的な内容である。
アルミ素材、機械的/化学的前処理、有機/無機染色、テクスチャー、エッチング、複合処理。
8. その他
- 講義中に各種サンプルのを回覧
- フリータイムに名刺交換、自由に展示サンプルを手に取って見、山口講師に質問。
- アルミ加飾のサンプルプレゼント。