2007年2月1日
コロナ工業株式会社
19世紀のはじめに発見され、現在では家庭用品、建築物の内外装などに多く使用
されているアルミニウム。
その表面処理で、無色透明な酸化皮膜を形成させ、美しい銀白色の金属光沢を保持
したまま耐食性、耐摩耗性を飛躍的に改善させることができるアルマイト処理。
今回はコロナ工業株式会社様の御好意で、ショールームで沢山の製品サンプル等を
見ながら、アルミニウムや、その表面処理であるアルマイトについて教えていただ
きました。
■アルミニウムの種類
アルミニウムは軟らかく、展伸性に富むが、用途によってさらに強度を高める等の
性質改善が必要な場合、様々な元素を加えたアルミニウム合金として使用されます。
アルミニウム合金は板、形材、管、棒、線、鍛造品などの『展伸材』と金型鋳物、
ダイカストなどの『鋳物材』に大別されます。
下記はアルミニウム合金の分類
『展伸材』
・非熱処理型合金
純アルミニウム(1000系)
Al-Mu系合金(3000系)
Al-Si系合金(4000系)
Al-Mg系合金(5000系)
・熱処理型合金
Al-Cu-Mg系合金(2000系)
Al-Mg-Si系合金(6000系)
Al-Zn-Mg系合金(7000系)
『鋳物材』
・非熱処理型合金
純アルミニウム
Al-Si系合金
Al-Mg系合金
・熱処理型合金
Al-Cu-Si系合金
Al-Cu-Mg-Si系合金
Al-Mg-Si系合金
■アルマイト処理に付いて
広義のアルマイト処理は、前処理と陽極酸化処理、及びこれに続く着色処理、
封孔処理からなっており、それらを効果的に組み合わせて、装飾性、機能性に
優れたアルミニウム製品を生産することができます。
アルマイト処理の工程は仕上げの種類によって異なり、実際の工程は複雑だが、
基本的な流れは下記の通りです。
1.素材の調整(プレス、切断、エンボス、絞り等の成形加工)
2.機械的前処理(梨地、仕上げ磨き、ヘアライン等)
3.脱脂処理(アルカリ性、中性、酸性)
4.化学的梨地処理/エッチング/化学的研摩処理
5.スマット除去処理
6.アルマイト処理(陽極酸化)
7.着色処理
8.封孔処理
9.仕上げ
実際にはこの工程の中で、必要な処理が選択されて行われます。簡単な処理
でも素地の調整から仕上がりまでに数十工程にもなり、どの工程が不完全でも
好いアルマイト製品は得られません。
■アルマイト処理の原理
アルミニウムを薄い硫酸水溶液に浸し、これを陽極(+)とし、対極に硫酸に
侵されない鉛板や炭素板を陰極(−)として配線し、直流電気を通す
と、陽極につながれたアルミニウムの表面に酸化アルミニウム皮膜が成長して
ゆきます。
アルマイト処理では電流を流すためにアルミやチタンで出来た導電性の治具に
被処理物を取り付け、処理後に取り外します。このとき治具を取り付けた部分
は皮膜が成長しないため、アルマイトの不要な部分に治具を取り付けます。
アルマイト加工は電気化学的処理なので、電流密度、電圧、電源装置、液濃度、
pH、溶存アルミニウム、液温などを厳密に管理することが必要です。
アルマイト皮膜成長の初期の皮膜は無孔性ですが、成長と共に多孔質の皮膜に
なります。この皮膜は化学成分や性質が宝石のルビーとほぼ同じで非常に硬く
安定しています。
■アルマイトの染色と封孔
アルミニウムの装飾仕上げで最も効果的な方法は着色です。その中でもアルマ
イト処理した皮膜中に染料や金属塩を吸着させて着色させるという、他の金属
にない大きな特徴を利用することが出来ます。
この着色法と加工性に富むアルミニウムの特色を生かし、多様で近代的な装飾
表現が可能となります。
ただし、染色したままではアルマイト皮膜が不安定な状態のままで吸着性があ
り、指紋が付いたり汚染されやすく、逆に脱色剤に浸けるとせっかくの皮膜内
の染料が漂白されてしまいます。そこでこの皮膜の無数の微細孔を塞いで吸着
性を無くさなければなりません。この処理を封孔処理(シーリング)と称し、
アルマイト処理の後処理または仕上げ工程と位置づけられるものです。
今回は、今までよく解らなかったアルマイト処理を、実際のサンプルやDVDに
よる作業工程を見ながら詳しく教えていただきました。
美しいアルミニウムの表面には、美しい為の秘密(複雑な工程)がこんなにも
あったのかと、非常に勉強になりました。