JIDA

第18回「超塑性亜鉛合金」

 

2005年8月8日
三井金属鉱業株式会社
圧延加工事業部亜鉛加工部成形品グループ 谷口 幸一郎 氏
参加者 : 25名

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 今回の勉強会は、非鉄金属の大手、三井金属(株)の圧延加工事業部様より、
高純度亜鉛とアルミニウムを主成分とする「超塑性亜鉛SPZ」のご紹介、
成形加工の特徴について、サンプルを交えて幅広くレクチャーしていただき
ました。

<SPZの特徴>
1:イニシャル費が安価。
・メス型のみで成形可能。
・成形圧力が低く、金型の補強不要。
・鋳鉄製の金型で妬きいれが不要⇒加工、研磨の手間が少なくてすむ。
・金型が、半永久的に使用可能。

2:デザインの自由度が高い。
・自由な曲線の成形可能。
・アンダーカット形状でも成形可能。
・大型の成形が可能。
・雌ねじ雄ねじなどの圧入が可能。
・塗装、印刷はもちろん、文字や意匠マークの成形も可能。

3:金属筐体
・耐薬品性、耐食性に優れた亜鉛アルミ合金製。
・電磁波シールド性に優れている。
・リサイクル可能。環境負荷が小さい。
・樹脂よりはるかに強い剛性。

4:その他
・三井金属様では、原材料となる板から社内で一貫生産されているそうです。
・成形だけでなく加工、塗装、組立、シートスイッチ取付など、色々な要求
に答えてくださいます。
・過重がかかる場合は補強が必要です。

<成形方法>
1:元板の条件
・厚み:t1mm〜3mm。0.1mm間隔で製造可能。
・サイズ:最大550×1280
特殊740×1000
2:圧空成形条件
・温度:270゜C(金型、板ともに昇温)
・圧力最大:30気圧
・時間:10〜15分/1サイクル
・抜き勾配:2゜(標準)

成形方法の説明では、成形〜切断工程の流れを図で説明してくださいました。
また、特にアンダーカット形状の離型については、参加者全員へいただけま
した成形サンプルを用いて、 割り部分の説明、実際の抜きかたなど、大変
わかりやすく説明してくださいました。

<製品条件>
ねじ穴のボス等を接着するにはアクリル系・2液混合型の「ハードロック
(電気化学工業製)」を使用します。

<塗装仕様>
表面硬度やグレード等によって、ポリウレタン、アクリル、フタル酸、メラ
ミンを選択します。 また、焼き付け温度が高い場合は、成形部品の熱による
変形を防ぐために、 受け治具が必要になる場合があるとのことです。
良くある失敗ケースとして、部品のみ納入してもらい、自社で塗装したいと
いう依頼があるそうですが、 部品の変形を抑えて塗装するノウハウがないと、
部品がダメになってしまうため、注意が必要とのことでした。

<競合品との比較>
・イニシャル費が安い
・製品単価が高い
⇒少量多品種向きの製造方法だといえます。(〜10000個)
・製造条件〜サイズあたりの生産量〜
板金を除き、最も製造条件が広い。
⇒サイズの大きいものでメリットがあります。

<用途、分野>
・医療機器
・計測機器
・弱電
・映像処理機
等、生産量とコストのバランスの合う分野、また電磁波シールド性という
優れた特性を活かせる分野で、 広く活用されています。
特に医療機器では、電磁波シールド性だけでなく、ユーザにやさしいスタ
イリングを求められるため、 大きなR形状を用いることも多く、適した分
野とのことでした。

今回の勉強会では、インハウスデザイナーの方も多くご参加くださり、
SPZのような成形技術に関する関心度の高さを、改めて認識しました。
現在では、プレス加工などSPZ以外の技術も進化しており、差別化の境界
がだんだん交差してきているとのお話もいただきましたが、 従来、成形品
をあきらめていたような少量生産の品物でも、生産量やコストによっては
活用できることが良く分かりました。

また様々な優れた特性などを活かせるという点でも、今後のデザイン活動
をしてゆく上での引き出しを増やすことができました。