JIDA

第104回素材加工勉強会「見て、触れて、知る ~ステンレスの新しい可能性をデザインに~」

 

【開催趣旨】
ステンレス素材がどのようにして美しく、機能性に優れた意匠製品へと生まれ変わるのか。

日鉄ステンレスアートの工場とショールームを訪れて、そのプロセスを実際にご覧いただける見学会を開催します。
最新の製造工程や高度な技術、製品の開発ストーリーを紹介するとともに、ショールームで多彩なステンレス製品を体感いただけます。また、職人たちの技術や革新的なデザイン転写技術を目の当たりにすることで、サステナブルデザインの未来に触れることができる貴重な機会です。
ぜひこの機会に、ステンレスの持つ可能性を再発見してください。

【開催日】2025年1月23日(木)13:30~16:30 
【テーマ】見て、触れて、知る ~ステンレスの新しい可能性をデザインに~
【講 師】日鉄ステンレスアート株式会社 開発部 白山 和 氏 他
【参加人数】13名
【開催場所】日鉄ステンレスアート株式会社 兵庫県尼崎市次屋2-2-24  
      https://www.ms-art.co.jp/showroom/ 

【プログラム】
日鉄ステンレスアート本社のショールームにおいて、ステンレスの特徴、意匠技術、採用事例の説明を受けた後、ショールーム内の大型サンプルを見学しました。その後、ステンレスに意匠を施している工場を見学しました。

見学者の皆様およびショールームでの説明会、見学風景
多くの見学者の方から「ステンレス意匠製品の大きなサンプルを見ることにより、質感やイメージを良く実感、理解することができた」と声がありました。

1.勉強会

日鉄ステンレスアートから次の技術説明や新意匠の紹介がありました。

1)ステンレス意匠製品の構成、意匠技術

ステンレス鋼板に次の3つの表面処理を単独または複合で行い意匠と機能を付与しています。

  1. 柄をつける:研磨やエッチングで多彩な柄を付与
  2. 色をつける:化学発色法(商品名:ファインカラー)、またはスパッタリング法(商品名:ノイエス)により着色
  3. 機能をつける:親水性コーティング(商品名:ファインガード3)で耐汚染性を付与

それぞれの表面処理について詳細な説明がありました。

2)ステンレスの高いリサイクル性

ステンレスは本来のリサイクルであるマテリアルリサイクル率が非常に高く、サステナブルな素材であるとの説明がありました。

3)新意匠

①新研磨柄
石調のイメージや流線形のこれまでにない研磨柄(下写真 上)
②新エッチング柄
自然のゆらぎや風合いを感じさせるエッチング柄(下写真 中)
③ファインカラー 新色「フォレストグリーン」
エッチング技術と化学発色技術を​​​​​​​駆使した深みのある緑色​​​​​​​(下写真 下)​​​​​​​

4)質疑応答

標準製造可能範囲を外れる寸法の素材や加工品への着色が可能か、などを含め、多くの質問がありました。以下にQ&Aの例を示します。

Q.板厚0.8mm未満のステンレス素材へ意匠の付与はできますか?
A.0.8mm未満であっても、板幅、長さによっては製造可能な場合がありますので、ご相談下さい(幅:1000mm以下、長さ:2000mm以下、程度であれば可能)。

Q.最低受注単位は何枚ですか?また購入に関し商社、流通は限定されますか?
A.ステンレス定尺板、1枚から対応いたします。商社の限定はありません。

Q.プレス製品に着色できますか?
A.ファインカラー(化学発色法)では加工部と非加工部で色に差が出る可能性が高いです。また、ノイエス(スパッタリング法)では加工品の高さが約15mm以下に制限され、高さ方向で色調が変化する可能性があります。加工品に応じた着色方法を検討いたしますので、ご相談下さい。

 

2.工場見学/ショールームツアー

研磨、エッチング、化学発色(ファインカラー)、スパッタリング(ノイエス)、および コーティング(ファンガード3)の見学を行いました。写真はお示しできませんが、ステンレス板、1枚づつに対して丁寧に柄や色をつけている状況を見学しました。
また、エレベータ用途向けに行っている、曲げ、レーザーカット、スタッド溶接などの加工の現場を見学しました。意匠品にキズを入れないよう、さまざまな工夫をして加工を行っていました。
現場には、若い方が非常に多く活気があり、技術伝承が良く成されていると述べられる見学者の方がおられました。

 

3.最後に

中島委員長より最後の挨拶で「コンテンツたっぷりの勉強会を開催して頂きました」との感謝の言葉が述べられました。今回のキャッチフレーズ「見て、触れて、知る!」のとおり、多彩なステンレス意匠製品とその製造プロセスを見ることで理解が非常に深まりました。


【素材加工研究委員会 関連稿】
第103回 世界は鉄でできている ~鉄づくりの現場を体感せよ~ 
https://www.jida.or.jp/activity/research/standard/103